転職コラム

うつ病時に確認しておきたい会社側の適切な対応と使える制度

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こちらの記事は、うつ病を理由に転職をすすめるものではありません。

もちろん働く環境を変えるのは選択肢の一つですが、悩んでいる場合はまずは身近な人に相談してください。

相談する場合、家族、友人、転職エージェントなど複数から意見を聞くことを推奨します。

厚生労働省のデータでは、日本では100人に3~7人がうつ病を経験したことがあると答える程うつ病は意外と身近なものであり、近年急速に増えているとされています。

うつ病とは、精神的または身体的ストレスが蓄積されることで、脳の機能障害が起きている状態です。

食欲不振や眠れない、何事にもやる気が起きない、憂鬱な気分になり、体が動かなくなってしまうなどの症状が見られます。

うつ病を発症する原因は人それぞれです。

特に社会人になってからの生活において、仕事や会社は多くの時間を占め、職場環境や仕事内容、対人関係など様々な刺激要因が詰まっています。

もし、会社に勤めていてうつ病になったら…。

  • うつ病になったら仕事はどうすればよいのだろう
  • うつ病になったら会社を解雇されてしまうのではないか
  • 本来行うべき対策をしっかりと行っている会社であるのか

自分が取るべき対応や会社側としてどのように対応してくれるのかがわからず、余計不安になってしまうのではないでしょうか。

これらの不安を解決して安心できるよう、社員がうつ病になった場合に会社が取るべき対応や使える制度、休養の流れなどをご紹介していきます。

原則会社はうつ病を理由に社員を解雇できない

うつ病になった場合、一番大事なことはしっかりと休養することです。

しかし、うつ病になった場合、会社に休みをもらえるのだろうか。うつ病になり、休みをもらうと解雇されてしまうのではないかと心配になりますよね。

安心してください。原則として会社はうつ病を理由に社員を解雇できないという法律があります。

解雇できない理由と解雇が認められる(解雇される)場合を合わせて理解しておきましょう。

解雇できない理由

労働契約法16条にて、解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とすると定められています。

そのため、社員がうつ病になったことを理由に解雇された場合、それを不服として訴えることや損害賠償を請求できる場合もあります。

また、社員が病気やうつ病になった場合に、その休養のために休業する期間及びその後30日間は解雇できないという制限が労働基準法第19条1項に定められているため、休養復帰後すぐに解雇されるということもありません

解雇が認められている場合

会社はうつ病を理由に社員を解雇することは認められませんが、ある一定の条件を満たす場合に解雇が認められる場合があります

労働基準法第81条で、療養開始後3年を経過しても負傷または疾病が治らない場合においては、使用者は、平均賃金の1,200日分の打切補償を行い、その後はこの法律の規定による補償を行わなくてもよいと定められています。

うつ病での療養が長期間に渡り、復職が難しい場合には、会社側が打切補償として1,200日分の賃金を支払えば、それ以降は補償を支払わなくても良くなるとなるため、事実上の解雇とすることができるのです。

うつ病になったときの会社側の正しい対応

社員がうつ病を発症した場合、会社側は本来どのような対応をとることが望ましいとされているのかを理解してみましょう。

医師の診断を受けさせる

社員がうつ病の兆候が見られた場合に正しい会社であれば、まずは速やかに医師の診断を受けさせます

早めに医師の診断をしてもらえば、正しい治療を迅速に開始することができますし、休養やその期間に関しての適切な意見を聞くことができるのです。

また、会社の休職制度などを利用する場合、医師の診断書が必要となってくるため、医師の診断は早めに受けさせることが正しい対応と言えます。

うつ病の診断を受けた場合、以下の項目を医師に確認の上、会社側に伝えると良いでしょう。

  • 仕事を続けても大丈夫なのか、はたまた休業した方が良いのか
  • 休業を要する場合には、どのくらいの期間休業した方が良いのか

休職制度やその間の給与について説明する

社員がうつ病の診断を受けた際、会社側として休職制度やその間の給与に関してしっかりと説明しなければなりません。

この説明を迅速に行ってくれるか、そもそも休職制度がしっかりと整っているかを確認してみると、会社側の信頼性が見えてくるのではないでしょうか。

そして、会社の休職制度で特に確認すると良いのが以下の項目です。

  • 休職可能な期間について
  • 休職中の給与について
  • 傷病手当金について
  • 休職中の社会保険料の負担について
  • 会社との連絡方法・連絡が必要な場合

休職期間は会社の就業規則によって異なります

また、どのような場合に休業を認めるかという休職開始事由と呼ばれるものが、うつ病の診断を受けてすぐ適用になる場合と、業務外の傷病による欠勤が1ヶ月経過し、なお療養を継続する必要がある場合と定められている会社があるため、注意が必要です。

休職中は通常給与は支払われませんが、会社によっては就業規則や賃金規定に休職中も給与を支給するという規定がある場合もあります。

給与が支給されない場合、社員は健康保険から傷病手当金を受給できるケースがありますので、会社側に確認してみましょう。

また、休職中会社の誰と連絡を取ればよいのか、どんな時に連絡をすればよいのか確認しておく必要もあります。

 

会社によっては、定期的に連絡報告を義務付けている所もあります。

 

復職について説明する

社員がうつ病の診断を受け休業する場合には、復職に関しての説明もしっかりと行うことが正しい対応と言えます。

復職する場合に必要な診断書や、復職方法、復職可能かの面談の有無など。更には、定められている休職期間中に復職できなかった場合の対応についてまで説明されるかを確認しておきましょう。

労働環境を調査・整備する

会社の社員がうつ病を発症した場合、会社側は労働環境に問題はなかったか確認する必要があります。

そもそも、会社には働く社員がうつ病などの病気にならないよう事前に様々な対策や労働環境を整えるといった安全配慮義務というものが課せられているのです。

適切な予防策が会社としてとれていたか、再発防止として、労働環境や就業規則等の見直しをするかによって会社としての誠意を見極めることができます。

うつ病の社員にしてはいけない会社側の対応

前述とは対称に、うつ病の社員にしてはいけない会社側の対応というものもあります。

次に述べる対応を会社側が行った場合、不当な扱いとして拒否することや訴えることもできる可能性がありますので、理解しておきましょう。

うつ病の診断が出ているのに、無理に働かせる

医師からうつ病の診断を受けているにも関わらず無理に働かせることは、うつ病の悪化を招く恐れがあります。

そうした場合、会社の安全配慮義務違反を問われたり、損害賠償を求められる可能性があります。

うつ病を理由に解雇すること

うつ病を発症すると、思うように体が動かず会社に遅刻してしまったり、作業効率が落ちることがあります。

また、仕事上必要なコミュニケーションも円滑に取れないこともあり、会社側も対応に困ることもあるでしょう。

しかし、うつ病の診断が出て、それを理由に社員を解雇するということは不当解雇にあたるため原則としてできません。うつ病を発症する原因が、労働環境など会社側にある場合は尚更です。

会社側が行うべきうつ病発症予防策の有無を確認しよう

会社として、社員が安全に健康で働けるよう配慮するための安全配慮義務の中には、もちろん体だけではなく心の健康も含まれています。

そのために、会社として正しい予防策がとられていたかを確認してみましょう。仕事上のストレスが原因でうつ病を発症した場合、これらの対策がとられていなかったために主張できること、訴えられることなども合わせて解説していきます。

就業規則が整っている

就業規則とは労働時間や賃金、退職(解雇を含む)についてなどが書かれている会社のルールを定めたものです。

就業規則では、会社と社員それぞれが状況によって行うべきことや決まり事が明記されています。

その就業規則がしっかりと整い、誰でもすぐに閲覧できる環境であること、社員がうつ病など病気を発症した場合の対応方法が整えられていることが大切です。

就業規則は会社によって書いてある内容が異なりますが、うつ病を発症した場合、主に下記の項目について書かれているかをチェックしてみましょう。

  • 医師の受診について
  • 休職について
  • 復職について
  • 休職中の賃金について

これらの項目について明記することは義務ではありませんが、事前に整備されていない会社は、社員の心身における安全管理が不十分と言わざるを得ないでしょう。

労働環境が整備されている

会社でのうつ病発症の予防として一番重要なのは、労働環境が整備されているということです。

・望まない長時間労働で無理をしていないか

・上司と部下の関係が一方的になっていないか

・休憩や休暇をしっかりと確保できているか

・相談や問題提起を投げかけられる窓口はあるか

社会人にとって、会社で働いている時間は1日の多くの時間を占めます。

そして、多くの仕事や様々な世代の集まる会社内では、長時間労働やパワハラ、セクハラなどのストレス要因が横行しやすいのも現実です。

そんな環境で、いかに社員を守り、クリアな労働環境にするための対策を整えているかをみることによって、会社側の誠意を知ることができるのではないでしょうか。

ストレスチェックやメンタルヘルスケアが定期的に実施されている

労働安全衛生法第100条や厚生労働省からも、会社は社員に対し、ストレスチェックやメンタルヘルスケアを継続的かつ計画的に実施される必要性を示しています。

定期的に実施されるストレスチェックにおいて、個別対応が必要な場合は面接や医師の受診を促すこともあります。

また、ラインケアと呼ばれる管理監督者が日頃から社員を気にかけるなどのケアを常に行うことで社員の精神的不調をいち早く発見し、対処することができるとされています。

多くの業務をこなす中で、常日頃意識する必要のあるこの対策においては、会社としてないがしろにされやすいポイントでもあります。

これらのメンタルヘルスケアがしっかりと実施されている会社であったか思い返してみてください。

うつ病の予防策が取られていない場合に主張できること

会社として、うつ病の予防策が十分にとられていない場合、安全配慮義務違反とされる場合があります。

そして、うつ病を発症した原因が会社側にある場合、うつ病を労災として請求することや、損害賠償責任を負わせることができる場合があります。

うつ病を発症する前に事前に予防対処できることが一番ですが、会社側の要因でうつ病を発症した場合、これらの選択肢があることも覚えておいてください。

うつ病になった場合に使える制度

会社に勤めながらうつ病を発症した場合、使える制度や給付があります。それらを上手く活用しながら安心して休養をとれるようにしましょう。

休職制度

休職制度は会社ごとで定められているもので、期間やその間の給与についてなどは会社側に確認してみましょう。

うつ病の場合、程度のより医師からどのくらい休養治療が必要か指示される場合があります。

それと合わせて休職期間に関しては、軽度で最低でも1ヶ月、症状によっては半年程度休職するなど会社側と相談できるとよいでしょう。

傷病手当金

うつ病により休職中は会社から給与を支払われない場合が多くあります。

その場合、以下の条件を満たしていれば傷病手当金を申請することができます

・会社の社会保険の健康保険に加入している

・業務外の病気やケガで療養中である

・(連続する3日間を含む)4日以上仕事に就くことができていない

・休んだ期間中の給与の支払いがないこと

労務不能になった日から3日間は待機期間となり、その翌日から最長1年6か月の間支給されます。

一日あたりの傷病手当金の金額は、

直近12ヶ月の標準報酬月額を平均した額÷30日×2/3

概ね給与の2/3の金額が支給されることになります。

休業補償給付

休業補償給付とは労災保険の手当ての1つです。

休業補償給付を受け取るための条件は以下の通りです。

  • 業務上の事由または通勤による病気やケガで療養していること
  • 労働ができない状態であること
  • 休業中給与の支払いがされていないこと

休業の初日から3日間は待機期間となり、4日目から休業の続く限り支給されます。

3日間の待機期間に関しては、会社は社員に対して、給付基礎日額の60%を支払う必要があると定められています。

休業補償の給付金額は、丸一日休業した場合

休業補償給付=給付基礎日額※の60%×休業日数

      +

休業特別給付金=給付基礎日額※の20%×休業日数

※給付基礎日額:疾病の診断が出た日の直前3ヶ月に支払われた賃金の総額を日数によって割った金額。

つまり、休職期間中は賃金の80%が支払われることになります。

自立支援医療

自立支援医療とは、うつ病を含む精神疾患で通院による精神医療を続ける必要がある方に対して、通院による診療代や服薬代が1割負担になるというしくみです。

通常医療保険適用での治療は3割負担となりますので、長期での治療や服薬が必要となる精神疾患の診断がついた場合にはぜひ利用することをおすすめします。

軽減を受けるためには、自立支援医療受給者証に記載されている医療機関や薬局に限られますのでお近くの対象箇所をご確認ください。

働いていてうつ病になった場合

会社で働いていてうつ病の症状が見られた場合、あるいはうつ病の診断を受けた場合にすることをご紹介させていただきますので、無理せずできるところから進めていってください。

十分な休養をとり、専門家の治療を受けましょう

うつ病の診断をされた場合、一番大切なことはまず十分な休養をとることです。

仕事の引継ぎなどもあるかもしれませんが、最低限行い、一旦仕事から離れて心を休ませることが大事です。そして、精神科や心療内科など専門家の治療を無理なくゆっくりと受けていきましょう。

うつ病の治療には、休養や薬物療法、リハビリなどの様々な治療法があります。その効果はすぐに現れるということではありませんので、長い目で焦らず治療していきましょう。

会社側の労働環境に問題はなかったか見極めましょう

うつ病を発症した要因が会社側になかったか、この記事を呼んで見極めてみましょう。

休養をしっかりとり、うつ病の症状が安定してきた時、会社側に非がある場合には訴えを請求することや再発防止策を講じてもらう必要もあるかもしれません。

無理のない復職計画を立てましょう

十分な休養をとり、主治医や会社側と復職について話をする際に大切なことは、無理のない復職計画を立てることです。

うつ病は、もう大丈夫と思って無理をしてしまうと、再発する可能性もあります。まずは短時間勤務や出勤日数を制限しながらの復職を目指すと良いでしょう。

また復職した場合、以前のように働かなければという過度な使命感や責任感を持たず、まずは、職場に行けたこと、決まった時間落ち着いて作業ができたことなど少しずつできた部分を認めながら進めていきましょう。

転職も視野に入れましょう

うつ病になりそうなほど働く環境が辛い、合わないと感じた場合、無理して働き続ける選択だけではなく、転職を前向きに検討することも視野に入れてみてください。

苦しい環境から離れることは決して悪いことではありません。自分のやりたい仕事、環境が整備されている会社は他にもたくさんあります。

一度ゆっくり休むことや転職するということもうつ病発症を防ぐ一つの手段となり得るでしょう。

うつ病になったら

会社に勤めて、うつ病になった場合には、まずゆっくり休養をとってください。一度仕事や職場から離れて、自分を大切にすることです。

専門家の適切な治療を受け、少しずつ症状が落ち着いてきたとき、会社側の対応や労働環境はどうであったかを見極めてみてください。

会社側には適切な対応と予防策を講じてもらい、無理なく焦らず復職に向けて進めていきましょう。